多数の埋葬法
家族葬
家族葬・海洋葬ネットがすすめる葬儀のスタイル。一般的な家族葬は、「密葬」の別名としてつかわれているようです。広辞苑によると密葬は、「ひそかに葬ること。内々で行う葬式」です。本葬にたいする密葬という考えが多いようです。年末年始に葬儀がかさなり後日に本葬をする場合や、はなれている故郷で本葬を後日にする場合に遺族や親族だけでおこなう葬式です。また、変死など、死をはばかりたい場合もあります。
 しかし、家族葬・海洋葬ネットが提案する「家族葬」は、形式は密葬に似ていますが、「心で送る。家族で送る。」というコンセプトでもっと積極的に現代の葬儀を問いなおし、死に対して厳粛にむかいあい、自らの生をふりかえり、家族の絆を取りもどす新しい葬式のスタイルです。
 
自然葬
1991年に旗揚げした「葬送の自由をすすめる会」は、死んだらお墓に埋葬するという先入観とならわしにしばられない、葬送の自由を実践しています。 これまで「墓地、埋葬等に関する法律」より埋葬の自由は制限され、法的にも違法だという考えが一般的でしたが、厚生省、法務省などに事前折衝し、「墓地、埋葬等に関する法律は、散骨の様な葬送の方法を想定しておらず、法の対象外で禁じているわけではない(厚生省)」「節度をもって行われるかぎり、違法ではない(法務省)」との見解を得て、1991年に神奈川県相模灘で、「散骨」という形の自然葬をおこないました。
 
散骨
一般庶民がお墓をもつようになったのは、江戸幕府によって檀家制度がもうけられたころから。庶民の家のお墓が確立したのも明治30年代以降のことです。江戸以前は、山、野原、林、島などに遺体をすて、野すてが一般的でした。上流階級の人たちも、火葬のあとに骨をくだいて、山や谷にまいていたそうです。戦後になって、火葬が定着し、「葬送の自由をすすめる会」のとりくみなどにより、海や山に遺灰を散骨し、自然にかえす葬送が認められるようになりました。「復活説」にたつユダヤ教、キリスト教、イスラム教の熱心な信者にとっては、火葬して散骨などは地獄に堕ちる行為でしょう。仏教やヒンドゥー教の「輪廻転生」の思想からみれば、火葬は自然な行為です。
 
海洋葬
「葬送の自由をすすめる会」の自然葬の人気に対応し、海での散骨をある程度儀式化した海洋葬に葬儀社も力を入れるようになりました。チャーターしたクルーザーの船内で葬式をおこない、遺骨を細かく砕き海に流します。
 ちなみに世界の著名人では、フランスの名優ジャン・ギャバンはブルターニュ半島沖で散骨され、ギリシャ出身のソプラノ歌手マリア・カラスは遺言にそってエーゲ海に散骨、ドイツの社会主義者エンゲルスも遺言どおり白亜海岸沖に散骨されました。
宇宙葬
アメリカのベンチャー企業セレスティス社により、1997年4月21日にカナリア諸島の基地から世界初のロケット打ち上げによる「宇宙葬」がおこなわれました。専用カプセルに納められた7グラムの遺骨は、衛星と同じ軌道で地球を回り、数年後に引力に引きよせられて、やがて大気圏に突入、流れ星となって消えてゆくそうです。
 ただし、「流れ星」であって「星」になるわけではありません。大気圏に突入して、もう一度やかれるわけですから、二度焼きです。生きている人にとっては美しい光景に映りますが、当の故人または霊魂にとっては苦行かもしれません。
樹木葬
岩手県の祥雲寺では、「花に生まれ変わる仏たち」をコンセプトにして樹木葬をおこなっています。埋骨するときは、地面を深く掘り(約30cm)、骨壺等の容器からあけて、直接土中に遺骨をうめ、文字どおり自然にかえします。埋骨場所には目印に山ツツジ等の花木が植えられます。自然との共生をうたうこの墓地は、墓石、骨堂などの人工物は一切設置を禁じます。
 散骨に近いのですが、墓地としての使用許可を得ているので「遺骨を埋められる」のがミソ。「墓地つき散骨」、執拗に遺骨とお墓にこだわる日本人としては、自然葬と先祖供養が両方手に入る、いいとこ取りでしょうか。
水葬
現行の船員法では第15条に「船長は、船舶の航行中船内にある者が死亡したときは、命令の定めるところにより、これを水葬に付することができる。」とあります。
古代出雲でも航海集団を抱えていましたから、水葬がおこなわれていたようです。海に囲まれていた日本では昔からあった葬儀方法なのでしょう。
 現在は、船員法以外で遺体を水葬にするこはできません。
 
風葬
インドネシアのバトゥール湖の東畔、カルデラ外輪山の切り立った崖の下にある村トルニャンは、バリで唯一風葬が行われるところとして有名です。未婚者は土葬、既婚者は風葬といった形で葬られます。ここでの風葬は、遺体を地面に置き、腐って白骨化するまで数年間放置し、その後遺骨は近くにある石段の上に、他の死者達とともに並べられます。葬儀の「葬」という文字のいわれは、しかばねを草むらに置いている常態からきていますから、日本でも風葬は古代からあったのでしょう。
 
土葬
一神教のユダヤ教、キリスト教、イスラム教の人の「死」に対する考え方は共通しています。埋葬方法も一緒で、そのままの姿で埋葬する「土葬」です。その共通するキーワードは「復活」です。復活の日は、サタンの支配が「終末」を迎えるとき、悪魔が神に敗れ去る日に、墓に埋葬された死人たちは生き返り、あらためて神による「最後の審判」を受けて、神の国(天国)にいくか地獄に行くかを命じられるのです。そのために生前の姿をとどめていなければなりません。だから、土葬が基本です。ただし、最近ではプロテスタントを中心に火葬もすすんでいます。
 また、儒教の国でも「土葬」ですが、これは死体処理の方法としての「土葬」です。
 
火葬
釈迦仏教に少なからず影響を与えたインドのヒンドゥー教は、仏教よりも「輪廻転生」の思想が徹底しています。この「輪廻転生」は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の「復活」の思想とは対局にあります。「輪廻転生」では、人は、次の世に再び人として生まれ変わるか、鳥や魚や虫に生まれ変わるかは前世の行いによります。死体には何の思いもありません。
 ヒンドゥー教のインドでは、ガンジス河のほとりで火葬し、その煙と共に霊魂は天界にのぼります。この場合、火葬は宗教的な神聖な儀式です。灰はガンジス河に流します。人は生まれ変わりますから、お墓はいりません。
 日本も火葬は仏教とともに入ってきました。火葬が普及しだしたのは戦後からです。ただ、日本の場合は、火葬に宗教的な意味合いはありません。死体処理としての「火葬」で宗教的には「遺骨土葬」です。
 
鳥葬
ゾロアスター教は鳥葬で有名だが、チベットでは今でも死体を葬送するのに鳥葬がよく行われています。 これはチベット仏教の教えに、宇宙生成の五元素である地、水、火、風、空のなかで空がもっとも尊く、地がもっともいやしいと信じられていることから、鳥葬や火葬が重んじられている。また、 「魂が抜けた肉体は不要なもの、だから施しをしたほうがよい」というチベット仏教の考えに基づいています。ハゲワシなどに死体を施すものです 。
 
音楽葬
1997年3月13日、84歳で亡くなられた宝塚出身の歌手「葦原邦子」さんの葬儀は、「音楽葬」という名前で行われました。開式-演奏-弔辞-弔電-献歌-演奏-献歌-葬儀委員長挨拶-告別献花、最初の献歌のときは、参列者全員で「すみれの花咲く頃」を合唱したそうです。このほかの葬儀にも生前愛聴していた音楽をテープや生バンドで流す葬儀も一般的になりました。
 
友人葬
創価学会でおこなわれている葬儀のスタイル。創価学会は平成2年に日蓮正宗とたもとを分かち、「僧侶のいない葬儀」を確立しました。中心者にあわせて参列者が読経、唱題するなかを全員が焼香し、最後に全員で成仏を祈念します。在家信者だけの葬儀ですから、僧侶に施す「お布施」や「戒名料」、「お車代」はいりません。
 釈迦は出家者が葬儀に関わらないようにと考えていましたから、釈迦仏教の原点に近い葬儀かもしれません。
 
生前葬
本人が生きているうちに行う葬儀です。まだ、珍しいですが、有名人などにこれを行う人が増えてきています。お世話になった人に自分で直接お別れを言うことができます。「生前葬」を人生の一区切りにして、新しい生活を送ろうと考える人もいます。無宗教の「お別れ会」の形式の場合と、宗教的な葬儀を行う場合があります。
 

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